日本人は非常に頭痛の多い人種とされています。慢性的な頭痛に悩まされている方は10人に3人あまりとの報告もあります。CTやMRIを撮ってもらったけど特に頭痛の原因となるようなものはないから安心してください、と言われている方もおられるでしょう。あるいは自己判断で市販の鎮痛薬を繰り返し内服されている方もおられるでしょう。
慢性的な頭痛の原因として多いのは片頭痛と緊張型頭痛とされています。典型的な片頭痛は、目の前にチカチカとした光が見えた後に、「ズキンズキン」という頭痛が出現してきます。頭痛の間は光や音が煩わしくなり、暗くて静かなところにこもりたくなります。緊張型頭痛は、典型的には肩こりから来ることが多く、こめかみを締め付けられるような頭痛が夕刻に強くなるのが特徴です。このように書くと両者を区別することは簡単なように思いますが、実際には非典型的なことが多いうえ、両者が混在した混合型頭痛というのも高頻度に存在します。その他にも激しい頭痛とともに涙が出たり、鼻水がでたりする場合は群発頭痛やSUNCTと呼ばれる特殊な頭痛のこともあります。頭皮の下で神経が圧迫されて起こる神経痛のこともあります。慢性的な鼻水を伴えば副鼻腔炎かもしれませんし、発熱を伴えば髄膜炎かもしれません。精神的なストレスが原因であることもあります。
このように頭痛の原因は千差万別です。やっかいなことに、適切な治療を行わない期間が長くなると頭痛はどんどんこじれていき、ますます治らなくなっていきます。CTやMRIで異常がある頭痛以外、すなわち大半の頭痛には診断に直結するような検査所見はありません。正確な診断と治療は、丁寧な問診と診察、そして医師の経験に依ることが多いといって過言ではありません。
一方で、突然の頭痛はクモ膜下出血などの重篤な疾患が隠れていることがあるので、すぐに脳神経外科、あるいは救急病院を受診してください。クモ膜下出血は発症と同時に意識不明になって倒れてしまうようなイメージがあるかもしれませんが、中には頭痛を感じながらも活動には問題のない程度の軽症例もあります。しかしこういった軽症のかたでも再出血を生じて命に関わることが多いことが分かっています。「突然の頭痛」を感じたらとにかく早く脳神経外科・救急病院を受診してください。