パーキンソン病

手足の運動の微調整を司る神経細胞が弱ってしまい、震えや歩行障害をきたす病気がパーキンソン病です。神経難病に分類される病気ではありますが、適切な治療で症状をコントロールできる病気でもあります。

神経細胞が弱る、医学的には「神経が変性する」といいます。「変性」とはまるで老化のように神経細胞が徐々に減っていくことです。患者さんでは、脳のほんの一部、脳1.3kg~1.4kgのうちのわずか1g程度の黒質とよばれる神経細胞が変性しているために様々な症状が出現します。「まるで老化のように」と言いました。これは急に悪くなったり命に関わったりということがないという意味と、不老不死の薬がないのと同様に、変性というプロセス自体は止められない、それ故、徐々にではありますが病状は進行する、という意味があります。しかし、幸いにもこの病気には症状を緩和する治療があります。パーキンソン病で変性する黒質は、ドーパミンという物質を分泌し運動の微調整を行っています。したがってドーパミンを補ってやれば再び運動の微調整ができるようになり、症状が改善するのです。

しかしながら、長期的に見ると、薬の効きが落ちてきたり、体が無意識に動いてしまうジスキネジアという副作用が出てきたりします。そのために早期から将来を見据えた治療を行う必要があります。また一見体の動きと関係なさそうな低血圧や便秘、不眠症などがパーキンソン病の症状として、あるいは薬の副作用として出現し、日常生活の妨げになることも多いです。ある症状を緩和するお薬が他の症状を悪くしていることもしばしば経験します。

こういったパーキンソン病独特の問題について、これまでに何回も患者会や市民講座、新聞などのメディアでお話しさせていただいてきました。当院では、これらの症状を一つ一つ拾い上げ、総合的に判断し、適切な治療を提供していきますので、ぜひ一度ご相談ください。